公共 JSL高校社会科教材プラットフォーム

はじめに ―JSL 高校社会科教材「公共」をお使いになる先生方へ―

JSL(Japanese as Second Language)、つまり、日本語を母語としない生徒向 けの本教材には、以下の4つの特徴があります。

?① 単元ごとの EQ※の設定
?② 予習シートの段階的な概念記述
?③ 社会参加を前提とした活動の提案
?④ 表現活動を促すワークシート

以下、これらの設計の意図について、解説していきます。
平成 30 年告示の学習指導要領によれば、「公共」科目の教育に求められるものは、「理解と応用の力」「思考と表現の力」「社会参加の力」の育成です。これらの力を育成するには、日本語を母語とする生徒たちであっても、かなりの訓練を必要とすると思われます。その中で、日本語を母語としない生徒たちにとって壁となるのは、やはり、日本語によって社会的事象の概念を理解し、表現することです。ここで、「概念の理解」は、実は、ことばの問題だけではありません。前提となる知識や考え方の有無が大きな問題なのです。したがって、まず必要となるのが、前提の確認と段階的な思考の積み上げとなります。高校教科書は、小?中学校で学ぶ知識等が基盤となっており、日本語を母語とし、日本文化を背景としている生徒向けに書かれています。したがって、身につけた知識や文化背景が異なる場合、理解の前提となる土台を確かめつつ、段階的に思考を積み上げていくことが必要となります。特徴の②「段階的な概念記述」は、前提知識の有無を確認しながら学習を進めるためのものです。予習シートの記述にあたっては、複文を避け、単文/短文で書く等、「やさしい日本語」理念に沿うことを心がけました。言い換えが難しい単語には、英訳がつけてあります。一文一行になっているのは、機械翻訳が必要な場合に、その翻訳の精度を上げるためです。(機械翻訳ではもとの文の行がまたがっていると正しい訳が出ないことがあります。)
次に、考察を深めるための議論や、学んだことのまとめのために必要なのが、表現の支援 です。 新学習指導要領では、「主体的?対話的で深い学び」を掲げています。学習の中で、調べたり、考えたりしたことをことばで表現することが求められます。そこでは、まず、JSL 生徒の主体的参加を促すために母語や媒介語としての英語の活用が望まれるのですが、日本語で表現するための支援も必要となります。本教材の③④「社会参加を前提とした活動の提案」「表現活動を促すワークシート」では、生徒の発言を促し、考えたことや学んだことのまとめを書かせることを企図しています。書かせる欄には、書きやすいよう、文の構造の枠組みが示してあります。まとまった量の説明文を読ませるワークシートでは、英語の対訳をつけました。表現活動も、英語/日本語、両言語のうちどちらかを選べるようになっています。機械翻訳で日本語から直接英語以外の母語に訳すとうまくいかない場合がありますので、生徒の母語に翻訳する際には、英訳の方を使うことを薦めます。
「公共」科目は、社会科の中で、最も社会との接点が大きい科目です。この科目の学びを通して、「主体的な社会参加」の態度を涵養することが求められます。特に、異なる文化的?社会的背景を持つ JSL 生徒にとっては、市民教育としての意義が大きいと考えられます。①「単元ごとの EQ の設定」と③「社会参加を前提とした活動の提案」は、「公共」を学ぶ意義を明示的に示し、良き市民として社会参加するために必要な考え方や姿勢を身につけてほしいという願いのもとに作成しました。JSL 生徒たちが持っている考え方や身につけている文化は、日本語母語の生徒たちとは異なっています。そのことを念頭に置き、彼らの母文化を尊重しながら、日本社会になじめるよう、消費行動やアルバイトなどの具体例に沿って、活発な対話を心がけていただきたいと思います。

※EQ とは Essential Question(本質的な問い)の略で、各単元において必ず学びとってほしい焦点となる設問です。主体的?対話的にこの問いに取り組むことで、学習が深まります。

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